睡眠時無呼吸症候群

はじめに

睡眠時無呼吸症候群

(例)山陽新幹線で起きた居眠り運転
「2003年2月,乗客を乗せた新幹線が,運転士が眠ったまま時速270キロで走り続けた。幸い自動制御により駅で停止した。しかし,その後も運転士は眠り続け,車掌に起こされるまで気がつかなかった。運転士は身長170cm,体重100kg,睡眠中に大きなイビキをかいていた。前夜は10時間の睡眠をとっていた。数年前より寝ているときに何度も目が覚める,イビキをかいているときに,息が止まっているようだと,家族に指摘されたことがある。」

結果的には大事故には至らなかったのですが,一歩間違うと大変なことになったとでしょう。
睡眠時無呼吸症候群は,かなり以前から知られていた病気なのですが,割と認知されていない状況が続いてきました。この事故をきっかけに,やっと社会的にも注目を集めるようになりました。

もともと睡眠時無呼吸症候群の患者に交通事故が多いこと,自動車の運転や飛行機の操縦には重大な危険があることが指摘されていました。アメリカの胸部疾患学会は1994年に「睡眠時無呼吸・眠気・交通事故の危険性」という声明文発表しました。「臨床医は,その診断と治療に務める義務がある。またプロの運転手を雇用する団体は,睡眠時無呼吸のスクリーニングを行い,疑われるときは,速やかに専門医による診断と治療を受けさせなければならない」と。


睡眠時無呼吸と生活習慣病 -交通事故との関連-

アメリカで行われた研究では,1時間当たりの無呼吸数が20回以上の重症の方は,無治療のままで放置すると9年後には心臓病,脳卒中,交通事故などの原因で10人に4人死亡しています。軽症の方と比較してもその差は歴然です。
また,正常な方と比較して,睡眠時無呼吸症候群の患者さんは,高血圧は2倍,心疾患3倍,脳卒中は4倍,糖尿病は1.5倍多く発症する可能性があがるといわれています。
交通事故については,飲酒している人より重症の睡眠時無呼吸症候群の患者さんのほうが,ハンドル操作ミスが多いというデータもあります。

睡眠時無呼吸症候群って何?

睡眠時無呼吸症候群 とは、睡眠中に呼吸が止まってしまう病気です。舌の付け根や軟口蓋と呼ばれる部分が気道へ落ち込んだり、首のまわりに脂肪がついたり、アデノイドや扁桃肥大が原因となります。また、顎が小さく、顎が後退している小顎症が原因となることもあります。

働き盛りの年代に多い病気で患者さん自身の健康のみならず,社会生活も害する。
眠っている間,息を吸うときに喉の奥,空気の通り道(上気道)が狭くなり,呼吸が止まってしまう現象。
乳幼児〜高齢者までの幅広い年齢層に見られる。特に中年以降の男性の2〜4%,女性の0.5〜2%。
睡眠中に10秒以上の呼吸停止状態がある。
一晩7時間の睡眠中に30回以上の無呼吸,または1時間あたり5回以上の無呼吸がある。
専門医の診断に基づいて適切な治療を受ければ,これらの害を防ぐことができる。
問題はこの病気があまり知られていないこと。
   
睡眠時無呼吸症候群の徴候
睡眠中の症状:激しいいびきと無呼吸,異常体動,不眠,夜尿。
起床時の症状:全身倦怠,口渇,頭痛。 ■妻が一緒に寝てくれない。どんなところでも眠くなる。
寝ている間に頻繁に目が覚める,熟睡感がない。
身体所見:肥満,小下顎症,下顎後退症,扁桃・アデノイドの肥大,小太り・二重あご・中年男性。
昼間の症状:過度な眠気,知的能力の低下,性格変化,性的機能障害,社会生活上の諸問題(失業,交通事故)(交通事故は健康な人の7倍)。
アルコールによってひどくなる。
血圧が高い。
花粉症で増悪。
集中力が低下する。不眠,インポテンツ,肥満・・・。
   
睡眠時無呼吸症候群の合併症
糖尿病:睡眠中の低酸素というストレスによりノルアドレナリンなどが過剰に分泌され,インスリン抵抗性を生じる。
高血圧:夜間就眠中の交感神経活動の上昇は心拍出量を増やし,血管抵抗を増す。低酸素,ストレスホルモンなども。
狭心症・心筋梗塞のリスクは数倍に:朝は血小板の凝集機能が高い。低酸素,レム睡眠時の自律神経のアンバランス,なども引き金になる。
脳梗塞:起床直後につまりやすい。
不整脈:無呼吸中は脈が遅く,覚醒後に早くなる。低酸素が続くと,刺激伝道系や心筋に虚血が起こる。

睡眠時無呼吸症候群の分類

閉塞性睡眠時無呼吸 Obstructive Sleep Apnea (OSA)
中枢性睡眠時無呼吸 Central Sleep Apnea (CSA)
混合性睡眠時無呼吸 Mixed Sleep Apnea (MSA)
睡眠時低呼吸 Hypopnea

【重症度分類】
一時間あたりの無呼吸(Apnea)と低呼吸(Hypopnea)の合計数(AHI: Apnea/Hypopnea Index)によって分類されます。
軽症 5(10)≦AHI<20
中等症 20≦AHI<30
重症 30 ≦AHI

閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)

ここでは代表的な閉塞性睡眠時無呼吸についてご説明します。
10秒以上の上気道の閉塞によって無呼吸・低呼吸が起こるために起こります。
・努力性の呼吸があり,いびきをよくかきます。
・血液の中の酸素が少なくなります。

閉塞の原因:以下のような疾患があります。
1.形態的異常:肥満に伴う上気道軟部組織への脂肪沈着,上気道形態異常:鼻・副鼻腔疾患,外鼻孔狭窄,鼻中隔彎曲症,鼻アレルギー,副鼻腔炎,鼻茸など,口蓋扁桃肥大,巨舌症,鼻中隔彎曲症,上咽頭疾患後鼻孔閉鎖,アデノイド増殖症,上咽頭腫瘍,小顎症など
2.機能的異常:上気道の筋の活動度の低下

睡眠時無呼吸の検査

精密検査を受ける前に
・大きないびきをかく。
・睡眠中に呼吸停止がある。
・昼間に眠気がある。
・起床時に頭痛がしたり喉が渇く。
・睡眠中に体動や痙攣がある。
・記憶力,集中力の低下が見られる。
・夜間,トイレに起きることがある。
などの症状があるかたはこの病気の可能性がありますので,受診していただいたほうがよいでしょう。参考までに,眠気の程度を評価する指標をご紹介します。

Epworth Sleepiness Scale(ESS)  昼間の眠気指数
状況
該当点数
1.座って読書をしている時
0
1
2
3
2.テレビを見ている時
0
1
2
3
3.公の場所で座って何もしない時
0
1
2
3
4.1時間続けてくるまに乗せてもらっている時
0
1
2
3
5.状況が許せば,午後横になって休息する時
0
1
2
3
6.座って誰かと話をしている時
0
1
2
3
7.昼食後(お酒を飲まずに)静かに座っている時
0
1
2
3
8.車中で,交通渋滞で2~3分止まっている時
0
1
2
3

(0:決して眠くならない,1:稀に眠くなる,2:1と3の中間,3:眠くなることが多い)

点数合計による重症度の評価
正常:10点以下
軽症:11〜12点以下
中程度:13〜15点以下
重症:16点以上

点数が高いほど日中の眠気が強いということになります。


1)スクリーニング検査
簡易型在宅無呼吸検査装置:小型の装置で睡眠時無呼吸症候群の検査が家庭でできます。指先と鼻と胸に簡単なセンサーをつけて,休んでいただきます。装置のつけ方などをクリニックで説明をいたします。装置は小さいので邪魔にならず,つけたままで十分寝ていただくことが出来ます。1〜2泊分の検査が終了後は装置をクリニックにお返しいただき,専門の業者により解析を行い,睡眠時無呼吸の診断,程度を検討します。この方法で,一定以上の無呼吸が確認された場合は,後に紹介しますCPAPなどの治療をすすめていきます(保険適応になります)。

レスピロニクス社製の装置を用いた検査の例を示します。



2)精密検査
簡易型の装置で十分診断がつかない場合には,精密検査を行います。(この場合は入院が必要になりますので,可能な施設をご紹介します)。
これには睡眠ポリグラフィー(ポリソムノグラフィー:PSG)という検査を用います。
写真のように睡眠状態を見るために脳波,筋電図,眼球運動などを,呼吸状態を見るために,腹と胸にバンドを巻いて,それらの動きをみます。そして,パルスオキシメーターと呼ばれるセンサーをつけて,血液の酸素飽和度をみます(右の写真はPSGの装置です)。ポリソムノグラフィーの結果は,医師や専門の臨床検査技師によって解析されます。患者さんには,無呼吸数,睡眠状態などの結果を交え,睡眠時無呼吸であるかどうかどうか診断し,さらにそのタイプを検討することによって,最適な治療法を検討し,提案します。


睡眠時無呼吸症候群の治療

1)生活習慣の改善
・肥満の解消:早食い,ストレス解消に食べる代理食い,まとめ食い,夜食,ながら食いなどを避ける。
・アルコールや間食を避ける。三食を均等にとる,いろいろな食品をバランスよく,緑黄色野菜を多くする。
・無理のない運動。
・禁煙・節酒:タバコは低酸素,飲酒は上気道の筋肉を緩め,気道を狭くする。いびきが無呼吸に移行する。
・安定剤:上気道の筋肉をゆるめ,気道をせまくする。
・寝る姿勢の工夫。

2)歯科装具(マウスピース):口腔内装置で治療する場合

寝るときに装具をはめる方法です。下顎を前方に数mm突き出してかみ合わすようにするものです。下顎を前方に引き出すことによって,喉の奥の空気の通り道のスペースを広げ,舌が喉の奥に沈みこむのを防ぎ,舌のつけ根,咽頭レベルでの気道の閉塞をふせぐことになります。
この方法の適応のある方は,歯科・口腔外科のある医療機関で,歯形をとって作成していただきます。鼻閉があるときは先にそれを治療しておく必要があります。

3)経鼻式持続陽圧呼吸装置(CPAP)
CPAPとは、Continuous Positive Airway Pressureの略です。日本語では経鼻式持続陽圧呼吸といいます。この方法は鼻マスクにより患者さんの鼻から一定の陽圧をかけて睡眠中の気道の閉塞を防ぐものです。次のような特徴があります。
・治療開始時の導入が簡単です。
・非侵襲性なので、患者さんへの負担が軽いものです。
・副作用はあまりありません。マスクも最近はいろいろ改良されたものが出てきています。
・長期的使用が可能です。最近では装置が小型化し,旅行にも持ち運びが可能です。
・保険適応となります(装置は業者がお届けします。患者さんは医療機関に保険診療の自己負担分をお支払いただきます。装置の使用料は医療機関が業者に支払います)。
・無呼吸・低呼吸・いびきが消失します。
・血液ガスの改善(高炭酸ガス血症、低酸素血症など)が得られます。
・睡眠の質が向上(中途覚醒の消失、深睡眠の増加など)します。
・日中の眠気が解消し,QOLが向上します。
・高血圧や無呼吸による不整脈などが改善します。
ただし,肥満など,改善すべき状態があれば,そちらも併せて行う必要があります。

4)耳鼻科的手術
患者さんによっては適応になる場合があります。この場合耳鼻科で相談します。
1)鼻中隔矯正術
2)口蓋垂・軟口蓋・咽頭形成術
3)扁桃アデノイド手術



(参考)
睡眠時無呼吸症候群に係る事業用自動車の運転者の健康管理等について
ー平成15年3月18日国土交通省自動車交通局総務課ー
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha03/09/090318_.html
・SASの主な症状,自己判断法および診断・治療法等に関する情報を専門医の指導の下に取りまとめ,事業者・運転者向けの平易なマニュアルを作成した。
・日本バス協会・全国乗用自動車連合会,全日本トラック協会に対し以下の事情について周知徹底を図るよう通達した。
・マニュアルを活用しSASに関する正確な情報を関係者に周知すること。
1.SASは早期に発見し適切な治療を行うと通常の業務が可能であること。
2.家族の協力も得て早期発見に努め,本人が積極的に申告できるような環境を整えること。
3.SASの疑いの申告を受けたときは,業務に余裕をもたせる,また産業医などに相談し,早めに診断・治療を受けるように指導すること。
自動車事故対策センターに対し,運行管理者指導講習等において重点項目としてマニュアルの内容について指導するよう指示。

(2007年1月19日)

睡眠時無呼吸症候群の検査装置

睡眠時無呼吸検査装置

当クリニックでは、このたび睡眠時無呼吸症候群の検査装置として最新機器を導入いたしました。

この機器はわずか140gと小型・軽量で、睡眠中の呼吸状態と低酸素状態を同時に測定できます。 無呼吸や低酸素状態と不整脈なども計測することもできるホルター心電図検査の機能も兼ねそろえています。 記録されたデータはパソコンに転送することも可能なので詳しい検査が可能です。


睡眠時無呼吸症候群の詳しい情報はフクダ電子株式会社のウェブサイトをご覧下さい。